諸星大二郎の「海神記」と「失楽園」

磯良の眉間のシワはなんなのだろうなーと思っていたのですが、やはり厳しい自然の中で生きていくことの苦しみであったようです。
ふと思い出して開いてみた「失楽園諸星大二郎)」には、辺境の土地で狩をしながら生きてゆく辛さが、これでもかというほど描かれていました。ああ磯良もそうだったんだ、と思ったのです。海神記は日々の生活の描写なしに、いきなり海底火山の爆発でダイナミックに始まりますが、原始的な社会の中で食べて生きてゆくということは「失楽園」にあるような厳しいもの、という前提なんでしょう。
しかも「失楽園」では主人公ダンの恋人である少女が、無慈悲な自然の力で死んでしまう。そしてそのやりきれなさすぎる思いが、どこかに存在するという「幸福の沼」に主人公を旅立たせるわけです。海神記の磯良も似た流れです。
それにしても磯良はかっこいいですにゃ〜。相棒の浜子(男)もちょっとおっとりでイイし、敵の隼人の兄弟(傲慢そうな弟は磯良以上にドSの相)もイイ。脇役の名草くんも愛嬌があっていいですねぇ。いい男満載。なんという楽しい漫画なんでしょう。